制約を美化するべからず

デジタルカメラの良いところは、撮影中に背面のディスプレイで画像が確認できることです。これは銀塩カメラでは絶対無理。半日プリントだろうが1分プリントだろうが、一度撮影の現場を離れなくては画像の確認ができないカメラと、その場でおおよそが確認できるカメラの間には天と地ほどの差があります。この弱点を逆手にとって、デジタルでは撮影時の緊張感が無くなるとか、お手軽撮影では心が伝えられないなどとトンデモ分析をする方もいますが、私に言わせればそれは屁理屈です。少なくともブラケット撮影(露出を少しずつずらした写真を数枚撮り、失敗への保険をかける方法)を使う方は、背面ディスプレイの効用を否定できないはず。今までやむを得ず受けていた「制約」を、あたかも写真にとって必要であるもののように主張するのはおかしいですね。
とはいえ私も、レンズに関しては「制約」を楽しんでいる部分もあります。現在持っているレンズの中で良く使うのは、43mmと135mmの単焦点で、ズームはほとんど使いません。優柔不断な私は、ズームで自由に画角が変えられると、どうしても最適の焦点距離を求めて迷ってしまい、かえって最初から画角が決まっているレンズの方が使いやすく感じられるのです。けれど、ズームを使うと写真が下手になるとか、(体を動かさないので)フットワークが悪くなるなどと主張するつもりはありません。便利さで言えばどう見てもズームの方が便利ですし、今では(高いレンズは)画質的にも単焦点にひけを取らないと聞いています。その便利さを十分使いこなせる人は、ズームを使う方が良いに決まってますよね。私は、自分が使いこなせないモノを妙な理屈で批判するつもりはありません。
あ、似たような理由で、過去の名機をそのまま復刻したようなデジカメも嫌いです。良いものはいつまでも美しいけれど、それはその時代で可能な限りの技術と努力を注ぎ込んだ結果だと思っていますから。